
桃の季節に思い出す比較的新しい記憶棚から
桃はどうやって食べますか?
お菓子屋さん出身なので果物の剥き方には、やはりこだわりがある。普段、家で食べるときはちゃんと湯剥きをして食べますが、旅行中に八百屋さんやスーパーでおやつに買った際はそのまま十得ナイフで皮を剥きつつ、切って食べる。
スペイン、バルセロナに旅行のプランのひとつにLa Mussaraという山に登るというのがあり、一人、バルセロナから列車に乗ってそのツアーに参加した。引率のスペイン人とベトナム人のカップル。参加者はロシア人一人とロシア人カップルと私の4人。ロシア人カップルは遅刻して、先にベトナム人の女性の引率者とロシア人の男性と3人で登る事に。
やはり土地が変われば山の地層や植物も変わり、比較的簡単なハイキングコースだったけど、刺激的だった。山頂で遅れてきたロシア人カップルと引率のスペイン人男性と合流し、用意してくれていたサンドイッチで昼食を取り、違うルートで下山した。一緒に登ったロシア人男性は如何にもロシア人らしく無口な人だったが、若いカップルのロシア人は柔らかい雰囲気で特に女の子の方はあまり英語が話せないのだが私に好意的な視線を送ってきて、私も英語をあまり話せないし、社交的でないので無言の会話をしていた。印象的だったのが、途中で山の水が溜まった池で休憩し、その池で泳ごう!という時間があったのだが張り切って水着を着てきたにもかかわらず、池の水の冷たさに怖気付いて、足を水につけてパシャパシャしていた私をよそに、ロシア人の女の子はパサリ、と服を脱いで水着姿になっていた。そして、白い肌の胸とお腹の間には大きな花のタトゥーが入っていた。内気な雰囲気の彼女とはイメージが違くて、優雅に自然のプールで泳ぐ姿が美しかった。
下山し解散となったが、帰りの列車の待ち時間が1時間以上あり、小さな町の観光をすることをガイドの2人に勧められたが、ロシア人らしいロシア人の男性は一人で行動するという事になり、私はロシア人カップルの二人のこと気になっていたので一緒に観光する事にした。
観光と行っても特に見るものがなかったので、テラスでジェラートを3人で食べて話をしていた。女の子の方が、私に「ちょっとステレオタイプなことを聞くけど、池にいる時目を瞑っていたけど、瞑想していたの?」と聞いてきて、なんだか可笑しかった。やはりお互いに外国人を見ると行動に“お国柄”を見つけようとするものなんだなぁと思った。
「いや、ただ太陽が眩しくて目瞑ってただけだよ。」と答えて、その後も多分お互いの国の話をしたように思う。そのあとはコーヒー屋さんでテイクアウトのコーヒーを買い、時計を見ると列車の時刻に近付いていたので駅に向かう事にした。刻一刻と出発時刻に迫っているのにあまり急いでいる様子がない。そういえば、この二人は朝遅刻してきたのだと思い出し、焦り出す。どうにかチケットを買って目的の列車に乗ることができた。その後もグループ席に座り、女の子が今度入れたいタトゥーの図柄や日本の彫師のことを話したり、私は料理が得意な男の子にボルシチの作り方を聞いたりと過ごしていた。小腹が空いたのでリュックから朝買った桃を取り出して、十得ナイフで剥き始めていると、
「え?桃の皮むくの??」と不思議な顔で言われ、「え?剥かないの??」と負けないくらい不思議な顔で返すと、
ロシア「いやいや、剥かないでしょー」
日本「皮に毛あるじゃん!」
ロシア「うん、大丈夫!」
日本「じゃあ、何の果物剥いて食べるの?」
ロシア「林檎は剥くよ」
日本「林檎は剥かなくていいでしょ」
ロシア「おばあちゃんとかは剥かないけど」
と、かなりのカルチャーショックを受けた。
これがロシア流なのがやはり信じられず、メールでロシア人の友人2人に桃は剥かずに食べるか聞いたら、やはり剥かないと答えたので、これがロシアの桃の食べ方なのだと自分の中で認定された。 その後、日本で桃を剥かずにひとくち食べてみたけれど、やはり洗っても毛が気になり、ロシア流を自分の中に取り込むのは断念した。
桃を食べるときに思い出す旅のエピソード。
La Mussara からの景色。
元々は頂上に小さな村があり、風化した教会の跡などがあった。

